★ イヌイットはなぜ血栓症が少ない?
イヌイットとデンマーク人の心筋梗塞発症のリスクに、7倍もの差がでるのはなぜなのでしょう。北極圏に住むイヌイットは、昔から心筋梗塞発症のリスクが低いことが知られています。同じ北方でも、デンマーク人の、心臓病による死亡率は、イヌイットの7倍にもなります。
原因を調査してみると、イヌイットの血液中には、主食とするアザラシや魚の脂肪に多く含まれる『n-3系脂肪酸(EPA/DHA)』が非常に多く、デンマーク人は陸上動物の脂肪に多く含まれる『アラキドン酸』が多いことがわかりました。つまり、魚食中心と肉食中心の食生活の違いが、血栓による血管のつまりに大きく関わっていたのです。
★ n-3系脂肪酸の血液サラサラ効果
アラキドン酸は動脈硬化を促進しますが、n-3系脂肪酸では以下の3つ効果が確認されています。
① 血液をサラサラにする
② 血管をしなやかにする
③ 中性脂肪を下げる効果がある
日本の研究でも心筋梗塞発症のリスクは、n-3系脂肪酸をほとんど摂取していない人々と比べて、1日平均0.9g摂取した人は41%低くなり、1日平均2.1g摂取していた人は65%低くなりました。
(脂肪酸の質は血液検査で調べることができます)
★ 目標は1日2g以上の摂取
年齢や性別で異なりますが、厚生労働省では、n-3系脂肪酸の1日2g以上の摂取を推奨しています。魚に換算すると、ニシン(生)1尾、マイワシ(丸干し)5尾、サバ(生)2切れ、ホンマグロ(鮨ねた)9貫など、かなりの量です。しかも、n-3系脂肪酸は非常に酸化しやすいため、鮮度の高い魚であることが条件になるので、継続するには努力が必要です。HDLコレステロールが低い人や中性脂肪の高い人は、EPA製剤や魚油のサプリメントで補うのが良いでしょう。