昭和30年代くらいのモダンなリビングルームです。
応接セットのテーブルの上にはLPレコード盤、コーヒーとクリープ、ブラウン管テレビの横には
ステレオセットがみえますね。そしてその上にちょこんと座っている、首を傾げたワンちゃんに
見覚えはありませんか。(写真:北名古屋市昭和日常博物館で2021年に撮影しました)
犬の名前はニッパー、当時家具調ステレオを販売していたビクターのトレードマークとして使われていた
のでご存じの方も多いのではないでしょか。
ビクターマークの原画は1889年、イギリスの画家フランシス・バラウドによって描かれたものです。
ところでこのニッパーは、なぜ蓄音機に耳を傾けているのでしょう。そこにはこんな愛しい物語がありました。
ニッパーの最初の飼い主はフランシスの兄のマーク・H・バラウドでした。とても賢く、いたずら好きのニッパーをマークはとても可愛がっていました。
名前の由来はお客様の脚を噛んでしまうクセがあったことから、工具の噛む、挟む「ニッパー」を愛称にしたものです。しかし、やがてマークは病気で亡くなってしまいます。
弟のフランシスは、兄の息子とニッパーを引き取り育てることにしました。
ある日のこと、かつて蓄音機に録音していた兄マークの声を流してみると、ニッパーは懐かしい主人の声が聴こえてくる不思議なラッパの前で首をかしげてじっと聞き入っていたといいます。可憐なニッパーの様子に心打たれたフランシスは、その姿を絵画に描いたのでした。そしてタイトルを「His Master’s Voice」としました。
その後、円盤式蓄音機の発明者ベルリーナがこの愛情深いストーリーに感動したことから、1900年に名画そのものが商標登録され、最高品質と技術の象徴としてビクターへと引き継がれていったということです。
さて、筆者はとある大学の研究室にいたニッパー君を偶然にも譲り受けることになりました。
今後は、各地で行う回想法セッションで、皆さんと思い出話をする時に登場してもらう予定です。
皆さんはいつどんな場面でこのワンちゃんを見かけたでしょうか。
懐かしい話と皆の笑いのなかで新しい人生(犬生?)を楽しんでもらえそうです。
余談ですがよく見るとニッパーは筋肉質で引き締まったボディのイケメンでした。
賢そうなただずまいです | 首をかしげる独特のポーズ |