Vol.204 2024.12.02 ネット情報化社会のリスクを知る

◆マスメディアから分散化、個別化した自由なメディアへ
インターネットが一般化するまでは、情報はマスメディア(例えばテレビ局、新聞社等)が中心でしたがインターネットが広く普及した現代では誰でも発信主体となり、様々な情報を発信、意見を表明でき、人を動かす力がもてる環境が整いました。

情報量が増大し、現実の人間関係や場所時間の制約にとらわれることなくコミュニケーションがとれるなど、私たちに大きな利便性をもたらしました。

しかし私たちはこれら莫大な量の情報を使える環境のなかで全ての情報を見て理解することは不可能です。そのため、ニュースサイト、SNS、ブログ等の情報の海の中から、自分が着目して選択した情報のみを利用しています。ここで注目したいのは情報の選択をする際にバイアスが生じることです。

◆インターネットが促進するバイアスと雪崩現象
人は基本的に心地よく有利な情報を探し、反証するような情報を無視するというバイアス(確証バイアス)をもっています。
(例:この健康●●を食べたら病気が良くなった)
さらにネット上では影響力のある人の発信が、
無批判にいろんな人が膨らませ追従して広げていく「雪崩現象(サイバー・カスケード)」が増幅されていく危険性があります。

◆『フィルターバブル』 欲しい情報だけフィルターを通過し、欲しくない情報は遮断される
ある動画投稿やニュース記事を一度見ると、似た情報が次々と表示され、また見てしまう。

フィルターバブル
Filter Bubble

あなたが住んでいる地域の天気予報、グルメ情報、あなたが関心、興味を持つ情報、おすすめの商品も次々と紹介される。これはユーザー情報が検索エンジンやプラットフォームで収集されて、ユーザーが検索をすればその裏で推薦のシステムが動き、その人が見たいであろう情報や動画が優先的に出てくるシステムです。

私たちにとっても非常に便利で効率的ではあるのですが、気づかない間に推薦システムの影響を強く受けていて、自分で情報を取得しているように見えて、実際には推薦システムなどによって自動的に排除される情報もあり、接触する情報が制限されているということです。(システムによって作られた情報空間)

私たちは推薦システムがつくるバブル(泡)に囲まれて、バブルの外にある情報に接触しにくくなっています。インターネットの情報の海の中にいて、自分の世界をもった泡のなかで、一人ひとりが孤立してしまった状況ともえいるのがフィルターバブルの恐さです。

◆『エコーチェンバー』 同じような意見が部屋の中で反響して大きくなっていく
エコーはこだま、チェンバーは小部屋の意味で、閉鎖空間でコミュニケーションがこだまの様に繰り返され、特定の意見や信念が増幅されて考えの正しさが過度に確信されてしまう現象のことを言います。エコーチェンバーがおきると、世の中が自分と同じ考えの人ばかりの様に思え、時にはお互いの間で補強し合い極端な方向へ行く危険性もはらんでいます。
エコーチェンバーはSNS上で起こりやすい現象です。SNS上ではグループの考えに違和感を持った人は簡単にそこから抜け出せ、意見の違う人に対してブロックなどの機能を利用して情報空間から締め出すこともできます。

自分が心地よい情報環境を作り出そうとした結果作られた情報空間ですが、居心地の良さを求めると自然に作られてしまうので自分自身がエコーチェンバーの中にいることに気がつかない場合が多いです。

エコーチェンバー現象
Echo Chamber

では、フィルターバブルやエコーチェンバーの発生すると何が問題なのでしょう?

「自分たち」と「自分たち以外」、「自分たちの考えが正しい」「自分たちの正しい考えに反対するあいつらはまちがっている!」。といった考え方から社会の「分断」や「極化」が加速していくのではないかと懸念されています。

◆情報の海にのみこまれないために
見たいものしか見なくなったり、自己決定しいるつもりが他から制御されていたり、ネット情報化社会の問題の解決は容易ではありませんが、まずは自分を取りまくネット情報環境を自覚的に見てみるのはひとつの方法のようです。

・自分の周りの情報空間がどういうものかを知る
・フィルターバブル、エコーチェンバーの存在を知る
・情報リテラシーを向上させる「だいじな」

だ だれ? この情報は誰が発信したか?
い いつ? いつ発信されたのか?
じ 事実? 情報は事実か?参照はあるか?
な なぜ? 情報発信の目的は何か?
 

・あえて「逆」風を求める 「〇〇健康法 ウソ」で検索など
・専門家の本を読んでみる

参考:「デジタル空間とどう向き合うか」情報的健康の実現をめざして
鳥海不二夫/山本龍彦 (日経プレミアシリーズ)

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