女性に多い冷え性、最近とくに増えているようです。
「冬になると手足の先が冷えて、夜は電気毛布を使用してもなかなか眠れない。」
「夏季は職場で冷房が強すぎて、腰痛や頭痛、めまいを感じることさえあります。」
などとおっしゃる患者さんの声をよく聞くようになりました。なぜこのような方が増えているのでしょう。
現代医学的に解説すると『抹消血管の収縮によって血流不全をきたし、血液が供給する熱量が不足したために組織の保熱が不十分な状態』とでもなるのでしょうか。車社会やエアコンの普及など、原因は現代日本人の生活習慣の中に存在するようです。また、ホルモン異常をきたしやすい女性にとって、食生活の偏りやストレスなども冷え性増加につながっているようです。
では、冷え性の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。抹消循環改善剤、各種ホルモン剤、ビタミン剤や酵素剤などの生体賦活剤などが列挙されますが、根本的な治療法としては十分な方策がないのが現状のようです。
ところで、抹消の血液循環の悪化と説明される冷え性、漢方の考え方では生体の3つの要素、気・血・水全ての異常ととらえられています。例えば、ストレスで気のめぐりが滞った状態の方には気剤を、血液循環を改善するためには駆お血剤(くおけつざい)を、間質に浮腫を生じた方には水毒治療剤を用います。
代表的な冷え性治療の漢方薬としては、血色が悪くめまいや生理の異常をともなう方には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や温経湯(うんけいとう)、手足の冷えが強くときに吐き気や頭痛をともなう方には呉茱ゆ湯(ごしゅゆとう)、膝からしたがひどく冷えて冬場はしもやけもでき気分も沈みがちな方には当帰四逆加呉茱ゆ生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうぎょうとう)、顔が赤黒く便秘がちで首から上はのぼせる方には桃核承気湯(とうかくじようきとう)など、体質によって使い分けます。冷え性は漢方薬の得意分野といえるでしょう。
薬物療法以外では、睡眠、ストレス解消、食餌療法、運動療法などの生活習慣改善も大切です。また、リラックス効果のあるラベンダーやローマンカモミール、ホルモン調節作用をもつゼラニウムやクラリセージなどの植物精油を用いたアロマセラピーやハーブも有効です。