Q:子宮脱とはどんな病気でしょうか。
A:骨盤の最も低い位置にある子宮は、固定された臓器ではなく、じん帯や筋肉により支えられています。子宮の支持組織が弱まると、通常の位置から下方へさ がってきます。この状態を「子宮下垂」といいます。さらに下降が進行すれば、子宮の一部やその周辺にある膀胱、直腸が膣から体外へ脱出してしまいます。こ の状態を「子宮脱」といいます。
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Q:中高年に多い病気だと聞きましたが。
A:そうですね。一般的には、子宮を取り巻くじん帯や筋肉が衰える中高年に多く見受けられます。特に、日常から下腹部に腹圧をかけている方に多くみられま す。例えば、畑仕事をされる方、仕事で重い物を持つ機会の多い方、頑固な便秘症の方などです。また、出産との関連も有りそうです。
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Q:どのような症状が出るのでしょうか。
A:自覚症状は膣の違和感が多く、「膣の入り口に何か丸いものが触れる(丸いものとは、子宮の頸部です)」、「立ち仕事の後や、夕方になると尿が出にくくなる」と訴える方もいます。子宮下垂の初期症状では、痛みはありません。
中期や後期になると、外に出た子宮の表面がすれて痛んだり、おりものや出血もみられます。
また、子宮の前方は膀胱、後方は直腸とつながっているため、子宮が下方へ下がってくると自然に膀胱や直腸も一緒に下がってきます。子宮脱の症状が進行すると排尿・排便障害や歩行困難など、日常生活にも影響が起こります。
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Q:どのような治療方法がありますか。
A:初期段階では、日常生活で腹圧をかけないように指導したり、骨盤底の子宮を支持する筋肉をきたえる体操を試みて経過をみます。
膣の違和感だけの方は急いで治療する必要はありませんが、この疾患は分娩直後に起こるものを除いて自然に改善するケースは稀ですから、出血や排尿障害などの症状がある方は手術療法をお勧めします。
以前は、膣にリング状の器具やペッサリーを挿入して子宮脱を治療する方法もとられましたが、長期におよぶため、リングに当たった膣壁に炎症をおこしたり、潰瘍を形成するためお勧めできません。
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Q:どんな手術ですか。
A:一般に行われているのは、下がってきた子宮を膣式に(お腹を切らずに)摘出して、同時に膀胱や直腸を支持している組織を縫縮する手術(膣式子宮全摘術+膣会陰形成術)です。
1時間から1時間30分程度の手術時間で、麻酔は下半身麻酔(腰椎麻酔)で行います。入院期間は10日から2週間程です。また、最近では子宮や膀胱の吊り上げ手術など、他の手術方法も考案されています。
ただし、手術で完治しても、生活習慣を変えないで腹圧をかけていると再発する場合があり注意が必要です。日本人は、平均寿命が延びたために、手術の時期や 方法に配慮することも大切です。これらの手術は難しい手技ではありませんが、手術の熟練度によっては再発率にも差が生じるため、医師や施設の選択も大切な 要素といえます。
子宮脱や子宮下垂の方はおもいのほか多いのですが、他人に相談しにくいためひとりで悩んでいる方がたくさんおられるようです。治療後には、こんなに楽にな るならもっと早くくれば良かったと言われる方も少なくありません。ひとりで悩まずに気軽に相談していただければ幸いです。