加工食品や精製穀物の増加、菜食主義の方の増加に伴い現代日本人は亜鉛欠乏に陥りやすい食環境にあります。アトピー性皮膚炎や生殖機能低下、また精神的不安定状態などの原因として、亜鉛欠乏は思いのほか重要な課題といえます。
亜鉛の働きと亜鉛欠乏
生体内における亜鉛の働きは非常に多様で重要です。
亜鉛と関連のある酵素は200種類以上あります。中でも約70種類の酵素では、亜鉛が酵素活性の中心となっています。代表的な亜鉛酵素には、酸塩基平衡に関与する炭酸脱水素酵素、骨代謝に関与するアルカリフォスファターゼ、核酸代謝に関与するDNAポリメラーゼなどがあります。
また、亜鉛は活性酸素の消去、DNAの転写、インスリンやステロイドホルモンの作用、男性の性腺発育、免疫機能、また疲労回復や若さの維持など多彩な働きに深く関わっています。
亜鉛欠乏の症状には、以下のような特徴があります。
急性欠乏症状は、四肢末端や口周囲、外陰部、機械的刺激部位の糜爛、水泡形成、脱毛などの皮膚症状が主体となります。味覚障害や創傷治癒の遅延、皮膚掻痒症やアトピー性皮膚炎なども亜鉛欠乏を伴うケースが多くみられます。
一方慢性欠乏では、成長障害や性腺発育不全・機能低下などがみられ、男性更年期などモチベーションの低下や精神的不安定にも亜鉛欠乏が関与しています。
臨床検査データと亜鉛欠乏
通常亜鉛の血清値は130〜110(μg/dl)で、90(μg/dl)以下では亜鉛欠乏といえます。しかし亜鉛の血中濃度調節機構によって摂取量に関わらず亜鉛の血中濃度は一定に保たれるため、亜鉛の血清値は亜鉛欠乏の良いマーカーとはいえません。つまり、亜鉛の血清値が正常でも亜鉛欠乏の可能性は否定できません。
代表的な亜鉛酵素のアルカリフォスファターゼ(ALP)は亜鉛欠乏の目安となります。アルカリフォスファターゼの血清正常値は130〜300(IU/l)です。肝臓や胆道系の異常があれば高値になりますが、低値の場合には亜鉛欠乏を疑います。
サプリメントとして亜鉛を摂取する目安量は1日15〜60mgで、ブラザーイオンの銅も含んでいる方がより効果的です。また、マンガンやセレンなどのミネラルも同時摂取できるサプリメントをお勧めします。